あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

外注加工費(ドラマ『ガラパゴス』より)

2021年に『今ここにある危機と僕の好感度について』という傑作を生んだNHKのドラマ班が、相変わらず頑張っている。今回は『ガラパゴス』。タイトルからどんな物語なのだろうと考えていたのだが、「ガラパゴス」は「ガラパゴス携帯」の「ガラパゴス」だった。

 

日本だけで独特な発達をしてしまい、世界の潮流から取り残された商品の象徴のガラパゴス。家電業界も車業界も潮目を読み違え世界に遅れ、それを救うために国は「エコポイント」だの「エコカー減税」だのといった補助政策をとり、企業はその間に必死に起死回生策を打たねばならず、それが正社員切りにつながった。

 

その結果派遣会社が生まれ、労働者を部品のように使い捨てて、企業も派遣会社も太っていく。そうした社会の片隅で起きた、一人の派遣労働者仲野(満島真之介)の死亡事件。当初身元不明者の自殺として処理されたその事件を、他殺と見抜いた田川刑事(織田裕二)が執拗に追及していく中で、派遣労働の闇が暴かれていく・・・。

 

タイトルにした「外注加工費」はドラマの中で、派遣労働者として働いていた工藤(金井勇太)が、田川刑事にする話の中に出てくる。6畳程度の部屋にシフトもさまざまな者が何人も入れられ(それでも家賃は4万円も引かれる)、心を病むものも出る。使えなくなった者は取り除かれ新しい労働者に替えられる。派遣の経費はヒト扱いでさえない「外注加工費」、部品なのだと。〇ソナを思わせる大手派遣会社のやり手社長を、高嶋政宏さんが実に憎々しく演じている。

 

BSで今年2月に前後編で放送されたものを、全4回に再編集して現在総合で放送、今夜は第3話だ。

 

 

原作は相場英雄さんの社会派サスペンス。山本周五郎賞候補作。