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たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

家族のややこしさと素晴らしさ『戸村飯店青春100連発』瀬尾まいこ著

『そして、バトンは渡された』の瀬尾まいこさんの作品だ。この作品は未読だけれど、映画がとても良かったし、以前読んだ『傑作はまだ』も心温まる作品で、この著者のものをもっと読みたいと思っていた。

 

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それで、この『戸村飯店・・・』は、マミーさん(id:mamichansan)が、私の上記のエントリーに「瀬尾さんの作品ならこれが一番のオススメ」とコメントを下さったもの(実はそのマミーさんは、2022年の暮れの「只今絶賛入院中・・・」というエントリーを最後に更新がなく、気になっている)。

 

そのオススメいただいた作品を、遅ればせながらこの度やっと読んだので、マミーさんのお目に触れたらいいなという希望も込めて感想を・・・。

 

 

戸村飯店は大阪にある「超庶民的な」中華料理店だ。その店のヘイスケとコウスケという年子の兄弟が主人公で、兄と弟それぞれの視点で交互に話が展開する。

 

たった一歳違いの同じ男同士でありながら、見た目も性格もまるで違うこの兄弟は、互いをちょっとやりにくい相手と感じ距離を置いている。小さい頃から明るく元気で店の常連さんたちにも可愛がられているコウスケ。兄はそんな弟が当然店を継ぐのだろうと思い、高校を卒業すると東京の専門学校に行くと決めさっさと家を出る。それからの兄弟それぞれの日々が綴られる。

 

小説家になるからと専門学校に進みながら、それはたんに家を出る口実に過ぎず、それほど真剣に小説家になりたかった訳でもないヘイスケは、費用が返却される1か月でさっさと学校をやめカフェでのバイト生活に入る。理解あるカフェ店主のもと、専門学校時代の講師だった年上女性との交際も順調なヘイスケ。

 

次男ながら兄が全く家業を継ぐ気もなく家を出たため、当然店は自分が継ぐしかないと思い最後の高校生活を満喫するコウスケ。しかし進路決定の三者面談で、父親は家を継ぐというコウスケを叱り飛ばし、大学受験をしろと言う。

 

親の思いと子の思い。兄の心と弟の心。少しずつずれ、食い違う。でも、それぞれ思い合っている。ぶつかって、離れて、思い切って飛び込んで、話して、そうすることで見えてくるお互いの思いや良さ。家族って面倒くさいけど、最後の最後頼るところや帰るところがあるっていいねという気持ちになる(それは別に、血縁の家族だけとは限らないだろう)。

 

兄についてはいちおう落ち着くが、コウスケのその後が気になる。続編が書かれてもいい終わり方だが、まだだろうか。そして『夜明けのすべて』も読みたいけれど、これは映画が評判なので、図書館本は1年くらい待たないとだめだろうな。