あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

いまだ払拭できない情けなさ

またまた『虎に翼』の話になってしまう。それくらい考えさせられるドラマだ本作は。取り上げられる問題は、今までもさまざまな作品で扱われてきたかもしれないけれど、安易に予定調和に終わらせたりお涙頂戴の流れに持っていかないところが素晴らしい。

 

今日は久々にヒャンちゃん(崔香淑:ハン・ヨンス演)が登場。彼女は香子と名乗り、戦争中に知り合った日本人の妻になっていた。寅子と感動の再開、涙なみだで苦労話を・・・といくところだろうが、寅子を見てヒャンちゃんは表情を曇らせる。多岐川(滝藤賢一)は、決して寅子を連れてこないでと彼女に頼まれていたのだった。

 

事情を聞いて何か彼女の力になりたいと言う寅子に、多岐川は出来ることなどないとキッパリ言い放つ。「彼女の国に対する、人々の偏見をなくすことができるのか」と。

 

そうなのだ。寅子の時代から70年以上たつというのに、いまだ私たちはヒョンちゃんの故国に対する偏見を一掃できていない。戦争も知らなければ日本がかの地を統治していたことも知らない世代が(だからそうした人たちにとって、あちらとこちらは全くフラットなはずなのに)、なぜか不思議な優越意識を持っている。

 

ヒロインはもちろん優秀なうえ大変な努力があって、女性でありながらあの時代の法曹界で活躍できたのだと思うけれど、この作品ではけっして優等生に描かず、彼女の思いは私たちの感覚の延長線上にあるので非常に感情移入がしやすい。

 

そして周りの人たちも皆ひとくせあって聖人君子でもなんでもないのだけれど、ちょっとしたところで寅子に考えさせ気付かせるような重要な言葉を投げかけてくれる。見ている側もともに疑問に思い、考え、そして気づいていく。押しつけがましくないところも好感の持てる所以ではないだろうか。

 

ところどころ若い方だなと思わせるせりふがあったりもするけれど、それにしても、こんなに素晴らしい作品を書く若手の脚本家が出てきたことが、ドラマファンとしては頼もしく嬉しい。

 

 

行政のサービスで、玄関と浴室とトイレに手すりがついた。作業時にさわってしまい、ドライフラワーのリースが少し欠けたと言う。声をかけてくれればはずしたのに・・・。意識して見なければ分からない程度なので、まあ良しとしよう。