あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

静かで優しい『暗いところで待ち合わせ』乙一著

主人公は交通事故のために視力を失った女性ミチルと、気が弱いため職場で軽く扱われがちなアキヒロの二人。

 

ミチルには物心ついた時から母親はおらず、ずっと父娘二人で助け合って暮らしてきた。ところが青信号で交差点を渡っているとき信号無視の車にはねられ、徐々に光を失う。それまでしていた父の世話もできなくなり、申し訳なく思ううち、その父親も脳卒中で突然死んでしまい、駅のそばの住み慣れた家にミチルは一人取り残される。

 

必要最小限の買い物などの外出には、幼馴染のカズエに付き添ってもらうが、それ以外はほとんど家に閉じこもって、静かな弱い生き物のように息をひそめるようにして暮らしている。

 

ある日、ミチルの家のそばの駅で事故が起きる。ホームにいた人が、通過する急行電車にはねられたのだ。その人は誰かにホームから突き落とされたらしい。

 

その事故の後、ミチルの静かな生活に少しずつ変化が出始める。

 

思いがけない設定と展開。男はなぜ不自由な場所に居続けるのか。女はなぜ男の気配を察しながら無視し続けるのか。どこでその均衡が破れるのか。ドキドキさせる。しかしそれ以上に、静かで優しいその二人にひかれていく。どうかこの二人が悲しい目に遭わない展開でありますようにと祈ってしまう。

 

派手な展開にすることも可能だったと思うけれど、乙一さんのこの物語は、終始静かに穏やかに進み、つらいことの多かった主人公たちの未来に、柔らかな光が感じられる終わり方でとても良かった。

 

 

先日もNHKドラマ『星とレモンの部屋』で、繊細な人を主人公にした物語を見た。長らく、強くて華やかな目立つ人たちが世の中の表舞台で輝いてきたが、近年になって、ようやくこうした少数者や繊細過ぎる人たちの側から描かれる作品が多くなってきたように思う。

 

もちろん今も強い、あるいは派手な人たちが社会の中心であることに変わりはないが、そうではない人たちへの配慮を欠いた言動が、かなり激しくバッシングを受けるようになってきたのは大変好ましいことだと思う。

 

そうした変化を感じ取れない人々が、昨日も今日もネット上で批判を受けている。オリンピックの上層部のあの人もこの人も、かつては、強いものの象徴である政権を批判する牽引車的存在だった報道番組のCMまで・・・。

 

地球上のどの国のどの階層に生まれようと、どんな性格・趣味嗜好であろうと、誰もが平等に扱われ、自由や権利が保障されて、平和に穏やかに生きられる世の中が早く来てほしい。

 

 

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白魔女さんのクッキー。口の中でほろっとさくっとくずれる軽さなのにあっさりしています。白魔女さんはバターではなく、ココナッツオイルなどを使われるようなので、そのせいでしょうか。私の舌ではそれが何か、を探ることは出来ませんが・・・。彩に入れられた紙も、キャンディやジェリービーンズの可愛い模様で嬉しくなります。